デザインのなんで? 香里園のH邸 vol.1

 Projectページには各建築の最後にコンセプト文が載っていますが、ちょっと小難しく書いていたり、細かな部分の説明を端折っていたりしていて、分かりにくいと感じる方もいらっしゃるかも知れません。そこで、ブログ内でなんでそんなデザインにしたのか、各プロジェクトを数回に分けて建築の“部分”にクローズアップしてご説明いたします。


 今回、注目していただきたいのは、香里園のH邸のダイニング・キッチンの天井です。緑色の連続アーチというなかなか珍しいデザインになっています。ここには2つの理由があります。

 1つ目は天井の高さと梁の関係です。梁の存在を感じさせないようにするには、梁の下に天井を張るのが普通なのですが、ここでそのやり方をすると天井がとても低くなってしまうのです。そこで梁を避けてアーチをかけることで天井の高さを上げ、さらに連続させることで梁の存在感をうやむやにしているのです。

 2つ目の理由、それは小脳に効く空間をつくるためです。食べたり、眠ったり、人間の本能が露になる空間は、合理的ではないけれど何だかワクワクする質を持つものにしたいなと私は考えています。家は人間の「巣」です。生き物として大切な食事の空間は、家にとっても大切な空間であり、家族の特別な空間です。その特別な空間を連続アーチとHさん一家と一緒に選んだグリーンで飾ったという訳です。

 このような工夫は非合理的で、無くても誰も困りません。でも、大げさに言うと文化は一見ムダに見えたり、合理的でないと切り捨てられるような遊びから生まれてくるものです。建売住宅やハウスメーカーではこのようなクセのあるデザインは難しいですが、こういうところが家づくりの楽しいところではないかなと思います。

© Ikeda Hisashi Architects  2015-2021