ポジティブなガラス

 ずいぶん前の話になりますが、京セラ美術館へ行ってきました。写真は杉本博司による硝子の茶室「聞鳥庵」。モンドリアンと読むそうです。一般的にガラスは光を取り入れつつ、窓を塞ぐ為に使われることが多い建材です。この場合、ガラスそのものの存在感は無視され、無いものとされていると言えるのではないでしょうか。もちろん、ガラスそのものをデザインの対象とすることも多々ありますが、透明なフロートガラスの登場以来、ないものとして扱われがちな存在ではあります。聞鳥庵ではそのガラスで壁と屋根を構成しています。風景を愛でるなら野点と言って屋外でお茶を楽しむ方法もあります。室内環境を整えるには他にやりようがある訳ですから、その目的でもないでしょう。極小空間ですから、中に入れば目には見えないガラスのひんやりとした質感や、ガラスを透過した光、反射を感じ取ることでしょう。ここでは透明な物体としてのガラスが無いものとしてではなく、ポジティブに扱われています。建築でのガラスの取り扱いは性能面で語られることが多いですが、物質としてのガラスを忘れない様に心がけたいものです。

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