注文住宅の注文のコツ

 建築家に注文住宅の設計を依頼するとき、1から10まで注文しないといけないとか、何か特別なこだわりがなきゃダメなのでは、と考えている方によく出会います。実際はそんなこと無いのですが…。そこで建築家が主宰する設計事務所での注文の仕方について、考えてみたいと思います。

 「注文」という言葉がくっついているので、何か具体的な注文をしないといけないかというとそんなことはありません。むしろ漠然としていた方がいいとさえ言えます。それはなぜか。設計事務所をレストランに例えると分かりやすいかも知れません。

 ハウスメーカーはたくさんの住宅を建て、商品ラインナップも充実しています。住宅展示場に行けば見本を見ることもできます。これはレストランで言うと、全国チェーンのファミリーレストランです。豊富なメニューに分かりやすい食品サンプル、全国どこでも同じ味を提供し品質は安定しています。

 一方、建築家が主宰する設計事務所は、こだわりのあるオーナーシェフが経営している小さなレストランというイメージです。シェフは老舗レストランや海外で修行をしていたり、独学でお店を構えたり、そのバックグラウンドは様々です。そして決まったメニューもありません。お客さんごとにオリジナルレシピをつくるからです。こんなレストランで注文する時に、自分で考えたレシピを持っていってこの通りにつくってください、という人はいないでしょう。身体があたたまるスープとかさっぱり清涼感のある麺料理といった具合に求めているイメージを伝えれば、自分たちの想像を超えたプロの料理が出てきます。これは建築についても同じです。建築家はプロですから一般の方が知らない隠し味やスパイスを知っています。だから求めるイメージを伝えて、出来上がったものにもう少しこってりとか、パンチを効かせてとか好みに合わせて味を調整してもらえば良いのです。

 ただし、こういうスペースは絶対欲しいとか、この素材を使いたいといったこだわりについては、しっかり伝えるのがよいでしょう。レストランでいうなら、自分で釣り上げた魚を持ち込んで、美味しい魚料理をリクエストする感覚です。

 自分で描いた図面があってそのままつくってほしいという方は、建築家に依頼するよりも親切な工務店を探して図面の作成から建設まで依頼するのが良いと思います。

© Ikeda Hisashi Architects  2015-2017