ボーっ
散歩中、ベンチに座っているお婆さんを見かけたので、奥さんに「最近ボーっとする時間がないなあ」と言うと、朝5分だけでも頭の中を空っぽにする時間を取るといいよと教わる。
小さな水筒にコーヒーを入れてボーっスポットを探しながら通勤。緑道のベンチは石製でお尻が凍えてしまったので、事務所近くのおにクルに寄り道することにした。4階まで上がり窓際の椅子に腰を掛けてボーっ。グラウンドゴルフに興じる先輩方を見下ろしてボーっ。北摂の山並みを眺めてボーっ。目を瞑ってボーっ。5分過ぎたがボーっ。今日は10時にTOTOの営業さんが来るんだった、と思い出しそろそろボーっタイムは切り上げなければと思いつつボーっ。
しかし、おにクルはいい建築だ。確か一般投票で選ばれる「みんなの建築大賞」にも選ばれたとか。公共建築不毛の茨木市に突如現れた単なる施設以上の価値を持つ建築は市民の生活を豊かにし、建築の力ってすごいのだなと肌で感じさせる存在だ。建築関係者のS N Sでおにクルを紹介する際には特徴的な吹抜けや頂部のトップライトの写真を使っていることが多いが、自宅からも事務所からも徒歩圏内でヘビーユーザーの私に言わせれば、おにクルの良さはそこではないのだ。フラットな床をシンプルに積層させたその構成にこそ意味がある。壁ではなく床が主役となり、訪れる誰にでもいても良いと思わせるのは、壁が空間の脇役に下がり床がテラスまで含めて伸びやかに存在していることにあるのではないだろうか。4階ホールの間仕切りをカーテンにしているのもそういった意識が反映されているように思う。また、北側に望む山並みは、実は茨木市民もほとんどの人が知らなかった美しい稜線で、その存在に気づかせてくれたのもおにクルなのだ。もちろん複合したプログラムの組み合わせの妙も(建築家を相当悩ませたようだが)誰もが立ち寄りやすいものにしていて、発注した茨木市グッジョブ!である、などと考えながらボーっ。
では、そろそろTOTOさんが来る時間なので事務所に向かいます。