2025年9月1日
建築の真価はどこにあるのか
先日、JIA主催のトークイベントに参加しました。登壇したのは、大阪・関西万博の施設を設計した若手建築家たちです。開始から第2部の最初の質問、その後の議論まで拝聴しましたが、家の用事があり途中で失礼しました。それでも多くの示唆を得る時間になりました。
会場から出た印象的な問いかけのひとつに、「建築家の理論が伝わっていないのでは」というものがありました。私には、それは結局「建築の真価はどこにあるのか」という根源的な問いかけのように思えました。
登壇者からは「万博協会から発信を止められていた」とか「感じ取ってもらえればよい」といった意見が出ていましたが、私はやはり、建築の理念は空間そのもので達成されるべきではないか、と考えさせられました。プレゼンテーションを見る限りでは、建築家が「良きことげなストーリー」で共感を得なければならないと告白しているようにも感じられ、言葉にしないと建築の真価が伝わらないという現象は、現代的でとても興味深いと思いました。
さらに考えさせられたのは、ストーリーの位置づけです。提案時と実際に建った建築が全く異なり、残っているのはストーリーのみという方もいらっしゃいました。大企業が社会貢献を「守り」のストーリーとして掲げるのに対し、建築界では「攻め」の手段としてストーリーを紡いでいます。その背景には「創作にはアリバイが必要」という時代の空気があるのかもしれません。会場からの問いかけが、こうしたテーマを引き出すきっかけになっていました。
今回の議論を通じて、建築とストーリーの関係についてあらためて深く考える機会をいただきました。建築にとっての「真価」はどこにあるのか——これはこれからも探っていきたいテーマです。