【月イチ エッセイ】YOUNG ARCHITECTS CONFERENCE
先週末、YOUNG ARCHITECTS CONFERENCE 2025-2026 に参加した。
YAC は日本と海外の若手建築家の交流を目的とした展覧会で、2019 年に始まり、今回で 3 回目を迎える試みだ。初回の 2019 年は、私とバンバタカユキを中心に、学生時代の後輩たちと共に立ち上げた。大量のデータを取りまとめながら、現地の大学関係者や建築家の協力を得て、ようやく成功へとこぎつけたのを覚えている。
会場に入ると、出展者たちの写真がずらりと並んでいた。「世界には、自分と同じ志で頑張っている人がたくさんいる」。頭では分かっていたはずのことが、こうして顔とともに並んでいるのを見ると、ああ、確かにいるんだなあ、としみじみと思い入る。
展示作品は 58 組。スターアーキテクトの巨大建築とは異なる、住宅やインテリア、リノベーションといった、生活に寄り添う規模の仕事がほとんどだ。ドイツ側では、北京の住宅「Peach House」を展示していたFrederic Schnee さんの作品が印象に残った。レンガの扱い方や色味の混ぜ方、ファサードの構成が巧みだ。敷地は中国・北京にあり、入念なリサーチから建築を立ち上げているが、地域性の引用に留まらない建築家の個性が滲み出す作品であった。一方で私が自作を紹介すると、ドイツの建築家は「敷地の小ささ」や「壁の薄さ」に驚いていた。文化の背景が違えば、驚くポイントも違うのだ。
作品を見比べていると、日本とドイツの建築の違いが浮かび上がってくる。
日本の建築は柱や梁をあらわにした“間”の建築。線と面が独立し、それらの関係性から空間が立ち現れる。一方、ドイツの建築は建物全体を一つのボリュームとして捉え、ディテールはミニマムに納め、塊として成立させる。この違いを石を積む文化と柱を建てる文化に帰結させるのは短絡的な気がするが、グローバルに情報が行き交い、表現の平準化が進んでいると思われるこの時代に、こと建築の世界では若い世代の作品にはっきりと地域性が表れていることは興味深い発見だった。
また、ドイツでは断熱性能の基準が日本より厳しく、外壁の構造体を露わにしにくいという技術的な事情もある。建築は常に気候・風土・材料といった“地域の必然性”の上に立ち上がる。篠原一男が「民家はキノコである」と語ったように、建築は空から降ってくるものではなく、その場所の気候風土の中から生まれるものだと改めて感じた。
展示を眺めながら、「スターだけが建築文化をつくっているわけではない」とふと思った。むしろ文化を静かに押し進めているのは、地域を見つめ、小さな仕事に誠実に向き合っている“若手”たちなのかもしれない。建築家は未来をつくる仕事だが、その未来は、気候や文化、土地の歴史を丁寧に見つめることでしか始まらない。そのことを、58 組の作品が静かに教えてくれた。
最後に、YAC を企画・運営してくださっている皆様に心からお礼申し上げます。
貴重な機会をありがとうございました。

