2026 1月
大阪府茨木市を拠点に関西全域および全国各地で活動する一級建築士事務所です。
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【月イチ エッセイ】意味の意味

先日、Xでこのようなポストを見かけた。 フランス人のエンジニア(日英も喋れる)と打ち合わせ中、話が脱線して彼が日本の好きなエンタメについて語り始めたんだけど、「PPAPは日本人たちが思っているよりもずっとおもしろい。過小評価されている。英語圏の人が初めてあれを観たとき、誰しも息ができなくなるんだ」と熱弁された— demio (@ganko_na_yogore) December 16, 2025 ピコ太郎(古坂大魔王)がPPAPで世界的にバズってから、もう10年が経とうとしている。しかし、いまだにSNSで話題に上がるほどその歌詞とメロディーは印象的だった。誰もが口ずさみたくなる「ペンパイナッポーアッポーペン」という歌詞。もしこれが単に心地よいパ行を中心とした音の並びに魅力があるのだとしたら、「パンペロピッピーポンプカタン」でもその面白さは損なわれないのかも知れない。しかし、皆さんも感じるように「パンペロ…」は笑えない。そこには意味がないからだ。「ペンパイナッポー…」は全くナンセンスだが、口ずさみたくなる音の連続に「筆記用具・南国の黄色い果物・赤い果物・筆記用具」という意味があり、そこが何故だか(特に英語圏の人々に)面白く、惹きつけられてしまうのだ。ヘンテコな音の並びに、意味のない意味がある。意味の作用によって私たちは何億回もこの動画を再生したのだ。大阪弁の面白さを伝える「チャウチャウ」の言葉遊びもこれと同じ現象だろう。 さて、建築である。一昨年から建築の勉強会をするようになり、設計することとは一体何だろうと考えることが多くなった。 建築の意味って? 近代以前であれば、その様式や装飾にはそれぞれ固有の意味が象徴的に込められてきた。部分に注目すればオーダーやステンドグラスなど、ビルディングタイプではその用途に応じた様式が選ばれてきた。意味が通用するのは、その意味するところが共有されているからである。様式や装飾の持つ意味を知識として知っていることが建築家の職能の一つであったし、建築主もその意味を理解できる教養を持っていることが前提となる。近代以降、社会や経済の構造が大きく変化する中で建築もまた変遷した。その流れの中で様式や装飾が徐々に排除されていった訳だが、そこには建築の大衆化が一つのきっかけになったのではないかと思う。教養豊かな上流階級から、切実に機能を求める大衆へと建築の対象が変わる中で様式や装飾の持つ意味が共有されなくなり、やがて建築教育からも外されていく。建築から意味が消えたのではないか。その後、ポストモダンが象徴や記号を通して意味を回復しようとしたが、もはや共有されない意味を背負った様式はただの無用の長物となり、早々に廃れてしまった。 では、現代建築に意味は必要ないのだろうか。そうではない。ただし、意味を象徴として与えようとした瞬間、建築は弱くなると感じている。設計の中で実際に行っているのは、意味を込めることではない。寸法と物質の操作だ。壁と壁の距離、天井の高さ、光の入り方、物と物の位置関係。図面を描いているとき、これは何を象徴しているのか、など考えていない。むしろ、椅子の位置が10センチ動くだけで、人の振る舞いが変わってしまうことの方が気になっている。それらを調整し、空間の関係を確定していくことで、人のふるまいは、ある方向に傾き、また別の方向に開かれる。そのとき立ち上がるのは、「これは何を象徴しているか」という理解ではなく、この場所では、なんとなくこう振る舞ってしまう、という身体的な反応である。意味は、あらかじめ用意された答えではなく、物と物の位置関係から読み取られてしまうものだ。現代建築に必要な意味とは、象徴として与えられるものではなく、物と物の位置関係から読み取られる、ふるまいの可能性なのではないだろうか。建築家の仕事は、意味を語ることではなく、意味が立ち上がる手前の状態を、空間として成立させることだと思っている。それは分かりやすさからは少し遠い。しかし、意味を「説明できるもの」にしすぎた建築ほど、驚くほど早く読まれ尽くしてしまう。長く使われ、何度も読み替えられる建築は、意味が立ち上がる手前の緊張を、空間として保ち続けているのではないだろうか。

土地探しの前に「要望整理」

「家を建てよう」と思ったとき、多くの人がまず土地を探し始めます。 けれど実は、土地探しより先にやっておいた方がいいことがあります。それが、自分たちの暮らしの要望を整理することです。 家づくりは、 土地 → 間取り → 暮らし ではなく、 暮らし → 要望 → 土地 の順番で考えた方が、後悔が少なくなります。 要望とは「部屋のリスト」ではない 家づくりの相談を受けていると、「LDKは何畳で、子ども部屋はいくつで…」という話から始まることがよくあります。 もちろん、それも大切な情報です。ただ、それらは要望の「結果」であって、出発点ではありません。 本当に大切なのは、その部屋でどんな時間を過ごしたいのか、家族がどんな距離感で暮らしたいのかということです。 「したい行為」に言い換えてみる たとえば、 大きなLDKがほしい 子ども部屋を2室つくりたい という要望があったとします。 これを一度、こんなふうに言い換えてみます。 家族が自然に集まれる場所がある 子どもが成長しながら、少しずつ自立していける 私たち建築家が扱うのは、部屋そのものよりも、そこで起こる暮らしの振る舞いです。 一日の過ごし方と、これからの変化を書いてみる 次におすすめしたいのは、今の暮らしをそのまま書き出してみることです。平日の朝から夜まで、休日はどう過ごしているか。さらに、少し先のことも想像してみます。 子どもが成長したあとの暮らし 働き方が変わった場合 家族構成が変わった場合 正確でなくて構いません。暮らしは変わる前提で書くことが大切です。 ここで初めて「選ぶ」 ここまで書き出した要望を、そのまま全部叶えようとすると、設計も土地探しも、どうしてもブレてしまいます。また、条件に合う土地が見つからず、思わぬ苦労をしてしまうこともあります。 そこで一度、要望を選び直します。 まずは、トップ3。家族構成が変わっても守りたいこと、迷ったときに立ち返る判断軸になるものです。 一方で、下位3も選びます。こちらは、条件によって優先度を下げられるもの。今は無理に決めなくてもいい要望です。子ども室の広さや数、将来の細かな間仕切りなどは、ここに入れても十分成立します。 それぞれについて、「なぜそれが大事か」「なぜ優先度を下げられるか」を一言添えると、整理が進みます。 NGデザインも書き出しておく 理想を書くよりも、「これは避けたい」「これがあるとストレスになる」という感覚は、設計にとって重要な条件です。 視線が常に気になる 音が逃げ場なく伝わる 将来の変化に対応できない構成 数や分類は気にせず、思いつくまま書いてみてください。 この要望リストを、建築家に見せる トップ3、下位3、NG。ここまで整理できたら、その要望リストをそのまま建築家に見せてください。 そして、「この暮らしを前提に、どんな土地が合いそうか」を一緒に考えていきます。土地の良し悪しを一人で判断するのではなく、設計の前提条件として土地を見る。これが、遠回りに見えて、いちばん失敗の少ない進め方です。 建築家の立場からひとこと 建築家にとって、この要望リストは「答え」ではありません。図面を縛るための条件でもなく、正解・不正解を決めるためのものでもありません。一緒に考え始めるための材料です。要望が整理されていればいるほど、土地の読み方も、設計の方向性も、より立体的に検討することができます。 初回相談について このような要望リストが事前にまとまっていなくても、初回のご相談では、同じ内容をこちらから順を追ってお聞きしています。 どんな一日を過ごしているか 家族の距離感や、変化への考え方 大事にしたいこと、避けたいこと 言葉になっていなくても構いません。会話をしながら、一緒に整理していきます。要望リストは、必須の宿題ではなく、考えるきっかけです。 まとめ 家づくりは、今ある土地に暮らしを当てはめることではありません。まず暮らしを整理し、その要望を建築家と共有し、一緒に土地を探していく。要望は、設計を縛るためのものではなく、設計を始めるためのスタートラインです。ぜひ、土地探しの段階から一緒に家づくりをスタートしましょう。 家づくりBASICS シリーズ これまでの「家づくりBASICS」は、こちらからご覧いただけます。 家づくりBASICS #1|家づくりの進め方(全体像) ▶︎[https://ikd-a.com/2025/10/17/iedukuri_1/] 家づくりBASICS #2|家づくりのパートナーの選び方 ▶︎[https://ikd-a.com/2025/12/19/iedukuri_2/] 順番に読んでいただくと、家づくりを考えるときの整理の仕方が、より立体的に見えてくると思います。 内容に関するご質問や個別のご相談は、お問い合わせフォームからお願いします。

新年のご挨拶 / 2026

明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、ありがとうございました。 新しい年もこれまでのご縁を大切にしながら、新しいことに挑戦する一年にしたいと思います。淡々と、粛々と。 本年もよろしくお願いいたします。