ikd-a
大阪府茨木市を拠点に関西全域および全国各地で活動する一級建築士事務所です。
-1
archive,author,author-ikd-a,author-1,wp-theme-stockholm,wp-child-theme-stockholm-child,qi-blocks-1.3.5,qodef-gutenberg--no-touch,stockholm-core-2.4,qodef-qi--no-touch,qi-addons-for-elementor-1.8.9,select-child-theme-ver-1.1.2,select-theme-ver-9.6,ajax_fade,page_not_loaded,menu-animation-line-through,,qode_menu_,wpb-js-composer js-comp-ver-6.13.0,vc_responsive,elementor-default,elementor-kit-8

引き出し

「いい空間をつくるにはどうしたらいいんですか」非常勤講師を務める大学の学生にこう聞かれた。「空間の体験を重ねて、それをいつでも使えるように引き出しにしまっておくことだよ」わたしは(ドヤ顔で)答えた。 この答え、実は受け売りである。ちょうど通勤電車に揺られながら読んでいた本にホラー小説の巨匠 スティーブン・キングのエピソードがあったのだ。ある日、スティーブン少年は叔父のオーレンと共に家の裏にある網戸を修理に向かった。オーレンは大きな道具箱を片手に家の裏手へ回る。作業は簡単に終わり、使った道具といえばドライバー一本であった。スティーブン少年はオーレンに尋ねる。ドライバーだけで済むなら、なぜこんなに大きくて重たい道具箱を持ってきたのか、と。 「ああ。でもなスティーヴィ」叔父は屈み込んで道具箱の取っ手を掴みながら言った。「何があるか、ここへ来てみなきゃあわからないからな。だから、道具はいつも、全部持っていた方がいい。そうしないと、思ってもいなかったことに出っくわして弱ったりするんだ」 存分に力を発揮して文章を書くためには、自分で道具箱を拵えて、それを持ち運ぶ筋肉を鍛えることである。(スティーブン・キング『小説作法』) このエピソードを読んだとき、「文章」を「建築」に置き換えても同じことが言えると思った。世の中に完全なオリジナリティはなく、新しく見えるものも実は既存の形や概念を組み合わせたり、ずらしたり、つまり編集することによって生み出されているとわたしは考えている。自分の引き出しの中身が少なければ、その組み合わせは貧弱なものになる。一方、引き出しにたくさんの道具があれば、言うまでもなく豊かなアイデアにつながる。 小説家にとっての道具が「言葉」だとすれば、建築家にとっては、「空間の体験」がそれにあたる。何も歴史的建造物や有名建築ばかりだけではない。日々の中で出会う、なんだか落ち着くベンチの配置やつい座りたくなる段差、早く立ち去りたいと思わせるお店の雰囲気など。こうした何気ない経験を引き出しにそっとしまっておく。わたしの場合、祖父母の家にあった広縁に置かれた一対のソファや心地よい風が通り抜ける実家の団地の階段が、幼い頃の思い出と共に心地よかった空間としてストックされている。 もし読者の中に建築を建てようと考えている方がいれば、建築家に「自分にとって心地よい空間」について語ってほしい。きっとそこから着想を得て、あなただけの特別な空間を構想してくれることだろう。

architecture lecture series | 1/1 #1

昨年から建築家仲間と企画・運営しております「architecture lecture series」ですが、2025年度は「1/1」と題しまして、1作品を1時間かけて語るシリーズです。 第1回目のゲストはMIDWの服部大祐さんに登壇していただきます。皆様のご参加をお待ちしています。・日 時:2025.6.14 sat    講演会14:00-15:30 懇親会15:30-16:30場 所:POND (近鉄奈良線「菖蒲池駅」すぐ)    奈良市あやめ池南6-1-7入場料:1,000円(学生500円)予 約:不要(直接会場までお越しください)

パビリオン@この街のクリエイター博覧会2025

先週末は「この街のクリエイター博覧会 2025」に参加しました。 せっかくの博覧会ですので“パビリオン”を建てたのですが、資材の高騰や円安の影響もあって建設費が6,000円を超える高額になり、SNSなどで炎上しないか心配しています。 展示したのは「OQ」というDIYできる応急屋台です。コロナ禍の当時、飲食店が店先でお弁当を販売することがありましたが、既製品の屋台がとても高いので、ホームセンターで手に入る材料で、誰でも簡単に組み立てられる屋台を考案し、作り方をWEBで無償公開しておりました。 今回は倉庫から応急屋台を引っ張り出しまして、会場内に建設しました。久しぶりでしたので5年前に比べておよそ1.5倍の工期がかかり、開幕に間に合わないのではとマスコミを賑わせそうになりましたが、なんとか25分で組み立てることができました。 ご来場いただいた方には面白がっていただき、期間限定で製作マニュアルを公開したところたくさんの方にダウンロードしていただきました。 ご来場くださった皆様、ありがとうございました!また、企画運営してくださったメビックやトーガシの皆様、一緒に会場を盛り上げてくださった出展者の皆様、お疲れさまでした◎貴重な機会に感謝です!

「この街のクリエイター博覧会2025」出展のお知らせ

今週金曜日、土曜日にマイドーム大阪で開催されます「この街のクリエイター博覧会2025」に出展いたします。 「OQ」の実物を展示予定です。お時間・ご興味ありましたらぜひお立ち寄りください。 なお、入場は無料ですが、事前申し込みが必要となります。詳しくは以下の概要をご確認ください。<イベント概要>…………………………………………………………………………この街のクリエイター博覧会2025大阪のクリエイティブパワーを世界へ発信!…………………………………………………………………………◇開催日時:2025年6月6日(金)14:00-18:00      2025年6月7日(土)10:00-17:00◇会場:マイドームおおさか 2階・3階 展示ホール◇入場料:無料(要事前来場登録)◇詳細:https://www.mebic.com/event/2025-06-06.html◇来場登録(Peatix):https://konokurihaku2025.peatix.com/

事務所開設12周年を迎えました

去る6月1日、事務所開設12周年を迎えました。 干支がまるっと一回り、赤ちゃんが小学6年生になる月日が経った訳で、よくここまで続けられたものだなあと、お客様やお仕事でご一緒させていただいた方々とのご縁や家族の支えに感謝です。 ただいまは、社員寮の新築プロジェクトが進行中ですが、戸建て住宅やマンションリノベなど幅広くご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 これからも建築や空間を通して、より良い社会・世界の実現にほんの僅かでも貢献できるように頑張りたいと思います! 今後とも末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。 ・写真は事務所からの眺め。目の前には神社の屋根と緑が、遠くには北摂の山並みが見えます。

建築士事務所登録番号の変更について

建築士事務所の更新登録に伴い、登録番号が下記の通り変更となりました。 【旧】大阪府知事登録(ロ)第24751号 →  【新】大阪府知事登録(ハ)第24751号

ダジャレ

5歳の娘が図書館から『いちにちだじゃれ』(ふくべあきひろ 作、かわしまななえ 絵、PHP研究所、2021年)という絵本を借りてきた。子育て世代なら一度は手に取ったことがあるかもしれない、あの絵本である。「ダジャレに興味を持つ歳になったか〜」と感慨深い。 車でお出かけの際には、退屈しのぎにダジャレを考えるゲームをする。車窓から見えるものの名前でダジャレを言い合うのだ。……と言っても、娘はまだダジャレ初心者。うまくダジャレに誘導する必要がある。こちらが先にダジャレを言ってしまうと怒り出すので、決して“答え”を言ってはならない。例えば「道路」をお題にする場合は、「道路、どうろ、どーろ、どろどろ…、うーん、うーん」と悩む様子を見せつつ、イントネーションを“道路”から“泥々”へと変えていく。すると、「どろどろのどうろ〜!」と娘が高らかにダジャレを宣うのである。 「蛍の光」(作詞 稲垣千頴、原曲 スコットランド民謡)の一節に「何時しか時も すぎの戸を 開けてぞ今朝は 別れ行く」とある。「過ぎ」ゆく時と木材の「杉」を掛けているのだが、昔は「なんだいダジャレかい」と思っていた。ところが近頃は、意味と音のズレを重ねる構成に、大きな意味を感じる。思えば、詩ってそういうことだよね、と。 ラジオ番組「アフター6ジャンクション」の映画批評の中で、宇多丸氏がある映画について「編集で韻を踏む」という発想を語っていたのも興味深かった。これって、建築空間でも応用できるのでは?たとえば、構造体のリズムを上下階で繰り返しながら、柱や壁の色を微妙に変化させていくような設計。整然とした繰り返しの中に意図的な「ズレ」を差し込むことで、単なる反復を超えた、詩的な“韻”が生まれる。音楽や言葉に「韻」があるように、建築にもリズムと変化、その「ずれ」が詩的な意味を持つのではないかと感じている。これは実際にプロジェクト内で試みた方法だが、外壁をガルバリウム鋼板の小波板で仕上げた住宅の間仕切り壁と建具に半透明のポリカーボネート小波板を用いたことがある(写真)。ここで住人は波打つ仕上げ材に屋外と屋内で繰り返し出会うのだが、そこで光や触った時の温度など金属板とポリカの間のズレを感じることになる。表面の波打つ形状と同様に面としての形は台形で共通しており、マテリアル=質感のズレを強調する。建物と建築の違いは、そこに「詩」があるかどうかだと考える池田にとって、「韻」は、今とても興味をそそられるテーマである。 そんなことを考えながら、今日も助手席で「くるまがくるまる!」と誇らしげに叫ぶ娘を、「うまい!座布団一枚!」とヨイショするのであった。 (撮影:髙橋菜生)

テトラポッド

とあるプロジェクトで協働しているクリエイターから「消波ブロックを使ってみないか」と提案があった。なるほど、確かに面白い。建築のスケール感ではなかなか扱えないような、荒々しい力強さがある。周辺環境を入れ子状に空間に取り込むコンセプトにもピッタリだ。 という訳で、消波ブロックを使う方向でプロジェクトは進んでいる。 消波ブロックとは海岸に置かれて波を打ち消す、コンクリート製のアレである。テトラポッドと呼んだ方が伝わりやすいかもしれない。ところが、そうはいかない事情があるのだ。 なんと日本において「テトラポッド」は、株式会社不動テトラが製造・販売している四脚ブロック製品の登録商標なのだ。そして、その四脚ブロック製品は民間には販売はしていないという。その理由を直接聞いた訳ではないので確定的なことは言えないのだが、伝え聞いた記憶によると、あくまで護岸のための製品でありそれ以外の用途に使われることはテトラポッドの持つイメージを損なうからとのこと(間違っていたらお知らせくださいませ)。まさか海岸だけでなく自社製品のイメージまでしっかり守っていたとは、いやはや驚きである。 という訳で、消波ブロックはウルトラ怪獣「ブルトン」(デザイン:成田亨)に似たテトラポッドではなく、三角形型のものになりそうです。

トークイベント@下鴨ロンド

昨晩、下鴨ロンドを運営されている本間さんにお招きいただき、kiiriの家入さんと共にゲストスピーカーとしてトークイベントに参加しました。本間さん、家入さんとは池田が業務担当非常勤講師をしている京都芸術大学でご一緒させていただいています。まずは本間さんの案内で下鴨ロンドの歴史や空間を堪能しました。アール・デコ調の和洋折衷の設はこの時代ならではの過渡期独特の味わいがあります。8年後には竣工100年を迎えるこの洋館を少しずつ改修しながら守る取り組みには、その仕組みづくりの点からも学びがありました。トークイベントには20名もの方にお越しいただき、恐縮至極。家入さんお手製のカレーやチーズケーキに舌鼓を打ちながら楽しい時を過ごしました。 肝心のトークですが、池田は京都芸術大学で行ったレクチャーをベースに、リノベーションが注目される社会的な背景をお話しました。個人的には、新建築のデータベースをもとに「リノベーション」という言葉が普及していく過程を追いかけた調査に面白みを感じています。「リノベーション」というワードが初めて新建築に登場するのは1985年のこと。その後、ポツポツと年に1回使われるかどうか、といった状況が、2004年から急激に使用頻度が高まり、今では誰もが当たり前に口にすることとなります。2004年ごろ、何があったのか。私なりの仮説を立ててお話した次第です。気になる方はお会いした際に聞いてくださいね。 本間さん、家入さん、会場にお越しくださった皆さま、素敵なひと時をありがとうございました!