香里園のH邸 | House H in Korien | 2016

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 大阪郊外の住宅地に建つ木造2階建ての住宅。敷地は1910年の京阪電鉄開通以降、宅地開発が進んだ丘陵地の中腹にある。周囲には擁壁、塀、駐車場、庭、そしてそれらの背後に建つ古くからの住宅と近年のミニ開発によって細分化された土地に建てられた住宅が入り交じる。古参の住宅が広い庭に育った樹木や垣根の向こう側に建つのに対して、新しい住宅は駐車場の確保と建蔽率、容積率から弾き出された計画に則っているため、意図せずに家屋が町並みに露になり、外部空間が自動車に専有されているものが数多く見られる。

町並みに参加する

 この住宅も元は北側隣地と一体であった土地を南北に分割した敷地に建っている。古参の住宅ほどの土地の余裕がない状況で、ここでは擁壁/基礎、塀/外壁をシームレスに扱い、町並みの構成要素である擁壁、塀、駐車場、庭を建築に取り込み住宅が意識的に町並みに参加することを試みた。「都市に開かれた建築」というテーマを耳にすることは多いが、宅地に建つ住宅においては「町並みに参加する住宅」が私にとってよりリアルに感じられるからだ。

町の空隙に顔を出す

 また、町並みに参加する構えを取ったことでプランは変形十字形となり、この建築は住宅地の空隙に顔を出すかたちとなった。敷地は庭や敷地境界沿いに植えられた樹木や丘陵地からの眺望を得られる環境であるため、町の隙間に広がる大空や周囲の緑を借景として取り入れることができ、実際の空間以上に大らかな広がりを持つ建築となった。

空間秩序のタガを緩める

 建主は30代夫婦と子供1人の3人家族で、要望は駐車場や収納など機能面に関することが主で、何か特別な生活を思い描いている様子ではなかった。住宅はリビングやダイニングといった主たる空間と個室群という構成で計画されることが慣習となっており、そのことが住人の生活を一義的なものに押し込めてしまっているのではないか。住宅の持つ空間のヒエラルキーに疑いの目を向け、各室を大らかな関係で結ぶことを試みた。つまり1つの主たる空間プラス個室群という構成に対し、1階と2階にそれぞれ主室をつくり空間を相対化させた、絶対的な中心を持たない空間秩序のタガが緩んだ「隙」のある住宅である。内部の空間ヒエラルキーの相対化によってテラスや庭といった囲われた外部空間、さらに寝室から見える町並みや遠方の景色でさえもタガの緩んだ秩序に組み込まれ、住宅地のささやかな家であっても自由で大らかな空気をまとった建築にしようと考えた。

(撮影:杉野 圭)

© Ikeda Hisashi Architects  2015-2017