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大阪府茨木市を拠点に関西全域および全国各地で活動する一級建築士事務所です。
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建築の真価はどこにあるのか

先日、JIA主催のトークイベントに参加しました。登壇したのは、大阪・関西万博の施設を設計した若手建築家たちです。開始から第2部の最初の質問、その後の議論まで拝聴しましたが、家の用事があり途中で失礼しました。それでも多くの示唆を得る時間になりました。 会場から出た印象的な問いかけのひとつに、「建築家の理論が伝わっていないのでは」というものがありました。私には、それは結局「建築の真価はどこにあるのか」という根源的な問いかけのように思えました。 登壇者からは「万博協会から発信を止められていた」とか「感じ取ってもらえればよい」といった意見が出ていましたが、私はやはり、建築の理念は空間そのもので達成されるべきではないか、と考えさせられました。プレゼンテーションを見る限りでは、建築家が「良きことげなストーリー」で共感を得なければならないと告白しているようにも感じられ、言葉にしないと建築の真価が伝わらないという現象は、現代的でとても興味深いと思いました。 さらに考えさせられたのは、ストーリーの位置づけです。提案時と実際に建った建築が全く異なり、残っているのはストーリーのみという方もいらっしゃいました。大企業が社会貢献を「守り」のストーリーとして掲げるのに対し、建築界では「攻め」の手段としてストーリーを紡いでいます。その背景には「創作にはアリバイが必要」という時代の空気があるのかもしれません。会場からの問いかけが、こうしたテーマを引き出すきっかけになっていました。 今回の議論を通じて、建築とストーリーの関係についてあらためて深く考える機会をいただきました。建築にとっての「真価」はどこにあるのか——これはこれからも探っていきたいテーマです。

「緑のモジャモジャ」でも「半沢直樹」でもない家づくり

まったく余計なお世話なのだが、インスタグラムを眺めていると、スレッズで話題の投稿が「おすすめ」として表示される。その中でよく目にするのが、現場や図面の写真に「こんなひどいことになっています。これで正しいのでしょうか?」と添えられた投稿だ。コメント欄には「それはひどいですね!」「左側の亀裂のほうがもっと心配です」といった、不安をあおるような言葉が並んでいる。 多くの人にとって家づくりは一生に一度の経験である。何も分からないまま、ショッピングモールの緑色のカウンターで相談し、そのまま勧められるままにハウスメーカーと契約する。現代の日本では、それがむしろスタンダードなのだろう。建築家に依頼するのは敷居が高く、そもそも誰に頼めばいいのか分からない。これは建築家の発信力の弱さ、怠慢でもあり、大いに反省すべきところだと思う。もちろん、ハウスメーカーで親切な担当者に出会い、満足のいく家を建てられる方も多いだろう。けれど、スレッズに悩みを投稿する人たちは、そうではなかったのだ。 ハウスメーカーとの家づくりの難しさは、クライアントがプロと直接やり取りしなければならないことだ。気軽に頼れる味方がいないまま、孤独な施主はスレッズにいる「どこかの誰か」に悩みを打ち明ける。本当に気の毒な状況である。そして、顔も知らない誰かからアドバイスを受けるのだが、それが信頼できる内容なのかは分からない。結局、堂々巡りになってしまう。 建築設計事務所と家づくりをする場合、施主は設計者と「設計監理契約」を、施工者とは「工事請負契約」を結ぶ。設計と施工は利害関係を持たないため、設計者は純粋に施主の味方・アドバイザーとして、図面や現場のチェックを行う。少し例えるなら、裁判における弁護士のような役割だ。施主の要望や不安に寄り添い、施工者との間に入って調整することができるから、匿名の誰かに頼る必要はない。 インスタを開くたびにこうした悩み相談を見ると、孤独に家づくりをしている人が多いことを実感し、胸が痛む。だからこそ、これから家づくりを考えている人には「緑のモジャモジャ」や「巨大な半沢直樹」ではない、別の選択肢があることを知ってほしい。そのためにも、私はこれからもコツコツとブログを更新してまいります。

「こたけ正義感」を見て、知らない世界をのぞいた話

最近、こたけ正義感さんのラジオやYouTubeをよく聞いています。お名前は知っていたのですが、先日、とある動画で来歴を知って、ぐっと興味が湧きました。現役の弁護士でありながら、芸人としても活動しているという、少し珍しい存在です。強いバックグラウンドを持つ人の話は、やはり引き込まれます。 自分はずっと建築一本でやってきたので、まったく違う世界に飛び込んでいる人を見ると、素直にすごいなと感じます。思いつきではなく、「どう動けばよいか」を考えながら行動している。その姿勢は芸人として遅めのスタートであるという自覚から来ている部分もあると思いますが、建築家として生きていくことと向き合う自分の姿とも、どこか重なる気がします。 弁護士や法曹界の話も自然に出てくるので、普段はまったく接点のない世界を、少しのぞけるのも面白いですよ。とくに身構える必要もなく、日常の延長として知らない世界の空気に触れられるのが魅力ですね。 個人的に一番印象に残ったのは、芸人になったきっかけの話。奥さんに「そんなにお笑いが好きなら、芸人になったら?」と言われて、その場で養成所に申し込んだそうです。実は奥さん自身もお笑い好きで、学生時代の将来の夢が「芸人と結婚すること」。夫を芸人にすることで、事後的に夢を叶えたという、信じがたいような、でも微笑ましいエピソードでした。 努力してきた人は、やっぱり面白いですね。自分とはまったく違う道を歩いているからこそ、そこから得られる刺激があるのだと思います。違う世界の人の話を聞くことで、自分の立ち位置や視点も、少しだけほぐれる気がしました。

講評会の季節

暑さのピークを迎える頃、大学では講評会の季節がやってくる。 今年は、武庫川女子大学と大阪産業大学にゲストクリティークとして参加した。前者では二つの住宅課題を、後者ではオフィスビル課題について、学生のプレゼンテーションを聞き、質問やコメントを返す。うまく切り返せる学生もいれば、フリーズしてしまう学生も。そんな時には助け舟を出す。私が学生の頃、講評会は吊し上げのような時間だったが、今どきのあり方はとてもいい雰囲気になっているなと思う。 大学ごとに特色があり、課題の設定や学生のアウトプットも異なる。複数の大学に立ち会えると、その違いがより際立って見えてきて、とても面白い。 では、自分がどんなことに着目してコメントしていたかというと、案外、どこでも似たようなことを伝えていた気がする。発表時間が1〜3分と短いこともあるかもしれないが、間取りの細かい話にはあまり触れず、敷地やその周辺環境に対して建築がどのような構えをとっているのか、という点を中心に講評していたことに気づいた。 もっと敷地をダイナミックに使ってもよいのではないかとか、住人や利用者を迎える街との境界は、もう少しおおらかに開いてもいいのでは、といった具合である。 建築の持つ力のひとつに、人と環境の関係を規定するということがある。建築は環境を取捨選択し、人に空間を提供する。その価値観の多くは設計者に委ねられている。もちろん施主の存在は大きく、設計者はその人の代理であると同時に、依代のようなものだとも言えるかも知れない。村野藤吾が「99%を聞き、1%に託す」と語っている。施主と徹底的に話し合って設計しても、最後の1%には建築家としての判断が残る。その1%にこそ意味がある、と私は思う。 学生の提案は図面と模型、そしてCGによって表現されている。細かな間取りの良し悪しは、これからいくらでも調整できるだろう。でも、人や地域や環境に対する構え──つまり、大きなデザインの方向性は、小手先では変えられない。だから、自然とそこにコメントが集中したのだろう。 学生に語っているようで、半分は自分への戒めのような時間。偉そうなことを言って本当に実践できているのか、と。明日から襟を正し、猫背を伸ばして姿勢良く、パソコンに向かうことにいたします。

引き出し

「いい空間をつくるにはどうしたらいいんですか」非常勤講師を務める大学の学生にこう聞かれた。「空間の体験を重ねて、それをいつでも使えるように引き出しにしまっておくことだよ」わたしは(ドヤ顔で)答えた。 この答え、実は受け売りである。ちょうど通勤電車に揺られながら読んでいた本にホラー小説の巨匠 スティーブン・キングのエピソードがあったのだ。ある日、スティーブン少年は叔父のオーレンと共に家の裏にある網戸を修理に向かった。オーレンは大きな道具箱を片手に家の裏手へ回る。作業は簡単に終わり、使った道具といえばドライバー一本であった。スティーブン少年はオーレンに尋ねる。ドライバーだけで済むなら、なぜこんなに大きくて重たい道具箱を持ってきたのか、と。 「ああ。でもなスティーヴィ」叔父は屈み込んで道具箱の取っ手を掴みながら言った。「何があるか、ここへ来てみなきゃあわからないからな。だから、道具はいつも、全部持っていた方がいい。そうしないと、思ってもいなかったことに出っくわして弱ったりするんだ」 存分に力を発揮して文章を書くためには、自分で道具箱を拵えて、それを持ち運ぶ筋肉を鍛えることである。(スティーブン・キング『小説作法』) このエピソードを読んだとき、「文章」を「建築」に置き換えても同じことが言えると思った。世の中に完全なオリジナリティはなく、新しく見えるものも実は既存の形や概念を組み合わせたり、ずらしたり、つまり編集することによって生み出されているとわたしは考えている。自分の引き出しの中身が少なければ、その組み合わせは貧弱なものになる。一方、引き出しにたくさんの道具があれば、言うまでもなく豊かなアイデアにつながる。 小説家にとっての道具が「言葉」だとすれば、建築家にとっては、「空間の体験」がそれにあたる。何も歴史的建造物や有名建築ばかりだけではない。日々の中で出会う、なんだか落ち着くベンチの配置やつい座りたくなる段差、早く立ち去りたいと思わせるお店の雰囲気など。こうした何気ない経験を引き出しにそっとしまっておく。わたしの場合、祖父母の家にあった広縁に置かれた一対のソファや心地よい風が通り抜ける実家の団地の階段が、幼い頃の思い出と共に心地よかった空間としてストックされている。 もし読者の中に建築を建てようと考えている方がいれば、建築家に「自分にとって心地よい空間」について語ってほしい。きっとそこから着想を得て、あなただけの特別な空間を構想してくれることだろう。

architecture lecture series | 1/1 #1

昨年から建築家仲間と企画・運営しております「architecture lecture series」ですが、2025年度は「1/1」と題しまして、1作品を1時間かけて語るシリーズです。 第1回目のゲストはMIDWの服部大祐さんに登壇していただきます。皆様のご参加をお待ちしています。・日 時:2025.6.14 sat    講演会14:00-15:30 懇親会15:30-16:30場 所:POND (近鉄奈良線「菖蒲池駅」すぐ)    奈良市あやめ池南6-1-7入場料:1,000円(学生500円)予 約:不要(直接会場までお越しください)

パビリオン@この街のクリエイター博覧会2025

先週末は「この街のクリエイター博覧会 2025」に参加しました。 せっかくの博覧会ですので“パビリオン”を建てたのですが、資材の高騰や円安の影響もあって建設費が6,000円を超える高額になり、SNSなどで炎上しないか心配しています。 展示したのは「OQ」というDIYできる応急屋台です。コロナ禍の当時、飲食店が店先でお弁当を販売することがありましたが、既製品の屋台がとても高いので、ホームセンターで手に入る材料で、誰でも簡単に組み立てられる屋台を考案し、作り方をWEBで無償公開しておりました。 今回は倉庫から応急屋台を引っ張り出しまして、会場内に建設しました。久しぶりでしたので5年前に比べておよそ1.5倍の工期がかかり、開幕に間に合わないのではとマスコミを賑わせそうになりましたが、なんとか25分で組み立てることができました。 ご来場いただいた方には面白がっていただき、期間限定で製作マニュアルを公開したところたくさんの方にダウンロードしていただきました。 ご来場くださった皆様、ありがとうございました!また、企画運営してくださったメビックやトーガシの皆様、一緒に会場を盛り上げてくださった出展者の皆様、お疲れさまでした◎貴重な機会に感謝です!

「この街のクリエイター博覧会2025」出展のお知らせ

今週金曜日、土曜日にマイドーム大阪で開催されます「この街のクリエイター博覧会2025」に出展いたします。 「OQ」の実物を展示予定です。お時間・ご興味ありましたらぜひお立ち寄りください。 なお、入場は無料ですが、事前申し込みが必要となります。詳しくは以下の概要をご確認ください。<イベント概要>…………………………………………………………………………この街のクリエイター博覧会2025大阪のクリエイティブパワーを世界へ発信!…………………………………………………………………………◇開催日時:2025年6月6日(金)14:00-18:00      2025年6月7日(土)10:00-17:00◇会場:マイドームおおさか 2階・3階 展示ホール◇入場料:無料(要事前来場登録)◇詳細:https://www.mebic.com/event/2025-06-06.html◇来場登録(Peatix):https://konokurihaku2025.peatix.com/

事務所開設12周年を迎えました

去る6月1日、事務所開設12周年を迎えました。 干支がまるっと一回り、赤ちゃんが小学6年生になる月日が経った訳で、よくここまで続けられたものだなあと、お客様やお仕事でご一緒させていただいた方々とのご縁や家族の支えに感謝です。 ただいまは、社員寮の新築プロジェクトが進行中ですが、戸建て住宅やマンションリノベなど幅広くご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 これからも建築や空間を通して、より良い社会・世界の実現にほんの僅かでも貢献できるように頑張りたいと思います! 今後とも末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。 ・写真は事務所からの眺め。目の前には神社の屋根と緑が、遠くには北摂の山並みが見えます。

建築士事務所登録番号の変更について

建築士事務所の更新登録に伴い、登録番号が下記の通り変更となりました。 【旧】大阪府知事登録(ロ)第24751号 →  【新】大阪府知事登録(ハ)第24751号